詩人:とーれぱすて
空席がない電車の中
腰の曲がったおばぁちゃんが
電車に揺られながら必死に立っているとき
何人のひとがどうぞと言えるだろう。
何十人もの人が行き交う大きい交差点
お腹が痛い、と
うずくまる人がいたとき
何人のひとが声をかけるだろう。
誰かが救いを求めているとき
私はその人を助けることができるだろうか。
誰かがするだろう、そう思って
目を背けてはいないだろうか。
救える苦しみ、迷い、そして命を
私は平然と見過ごしているのではないだろうか。
たくさんの人がいるからこそ
それだけの人を救うことができるはずなのに
たくさんの人がいることで
たくさんの人が困っている。
グッと下唇を噛むことしか
できないわたしは、
結局、偽善者だ。