詩人:獏
壊れたのか
アンテナも受信機も
ブラウン管よろしく
虹色に畳まれ
目に映る物
瞬時に消える
使い物にならなくなった
眼球のかわりに
水晶を
その義眼に映るのは
未来か過去か
ダイヤモンドなら
差詰め金塊や宝石
ガラス玉なら
丸く逆さまに
君が映る
逆さまの姿で
取り繕った表の顔の裏にある
毒づいて歪んだ君の顔
壊れたのはアンテナか
それなら替わりに
アクリル定規
届く電波は
上滑りする
挨拶と
知らない誰かの
歪曲したうわさ話
それとも受信機
替わりに螺旋
幾重にも巻かれ
百万個の導線で繋ぐ
届くのは
むやみに死にたがる
誰かの恨み言
錯覚を愛と呼ぶ
浮かれた裸体
生まれついた時から
こんな義眼を
瞼の下に仕込んであった