詩人:トケルネコ
ワイン片手に傅く事だって 隠した指先を立てる事だって、何だっていい
それは頭で分かったつもりの蜃気楼の話
おとつい 子供は逆らえない言葉を識った
母は父に息子の心臓を食卓に並べた
あいつは裏切りで有名になりたかっただけ
ジュダは背く事で果たされない約束を満たした
メドのたたないペシミスト 角の立たないインク瓶でも呷って
傷ついたウィット飛ばしてくれ
病める炎は12月の夜空に吸い込まれ
紅い海底はその乾いた瞳を上げ 風を眺めた
おとつい 子供は逆うことしか知らなかった
塩とコーヒーの食卓で膝を抱えていた
あの子は溺れることで証明したかっただけ
マリアは許される事など望んではいなかった
それは躯で贖うホンモノの痛み
ゴモラの男達は炎に焼かれ死んだんじゃなく
自ら氷のような鞭に縛られ 凍えて滅んだんだと
おとつい 世界は祈ることを覚えた
父は息子の心臓を刻んで窯にくべた
あの子はもう待てないと 夢の中で笑うように泣いていた
犬の舌はいつまでもいつまでも乾いていた・・・
その日、彼は抗う振りを止めた