詩人:ヒギシ
誰かの鼻歌が
微かに聞こえた気がした
肌寒い曇天の午後
風に膨らむカーテンの下
ゆるゆると微睡む
紅茶は切れたんだっけ
じゃあ水で良いや
窓枠の向こうの分厚い雲
汚い世界を隠してる
偶に射し込む光の下には
きっと誰もが羨むような
宝が眠っているんだよ
神様も覗き見するくらいの
素敵な何かがあるんだろう
狭い鉢に押し込まれて
とても窮屈そうな根っこ
300円で買ってきた
緑の葉っぱの幼いガジュマロ
お金で自然を買い取るのなら
端から壊さなければ良い
崩して戻して崩して買って
曇った目玉で繰り返す
奪った分だけ奪われて
それでも歩みを止めないのは
畜生の性か道化なのか
コップ半分飲み残しの水
ガジュマロに流し
また歩こうか