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詩人:アル
「柄モノは
裏返して乾すのよ、
色落ちするから」
「あぁ、なるほど〜
いいこと教えて頂きました
じゃ、ぼくを
裏返さないで乾したら
色落ちして少しは
色白になれますかね?」
地黒のぼくがトボけると
即座に
「あら、面白い方ね」
そう応えながら
うふふ、と笑う
洗濯物を乾したあと
ソファに横並びに坐って
お喋りをした
「三田さんはどちらに
お住まいでしたか?」
「この向こうの
中仙道と○号線に挟まれた
こんもり繁った
森がありますね?
生まれも育ちも
あのあたりです」
三田さんにはどこか
背筋の伸びた上品さが漂う
「あのお婆ちゃん、
藤田さんね、いつも
首にタオル掛けてるでしょ
一緒に
ちゃんとしたレストランで
食事をする時も
あんな調子だから
ちょっと恥ずかしいの
それから、
あそこのお婆ちゃん…」
三田さん自身には
お婆ちゃんの
自覚がないらしい
「この向こうの
中仙道と○号線に挟まれた
こんもり繁った
森がありますね?
わたし、
あのあたりで生まれて
育ちましたの」
たぶん
物覚えの悪いぼくのために
繰り返し同じ話を
してくれるのだろう
この三田さんが
認知症だとは思えないから