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[83313] 見捨てられた世界に咲く小さな花

詩人:チェシャ猫

誰か僕に帰る家を頂戴
焼きたてのパンとあったかいミルクを頂戴
ねえ 誰か僕を抱きしめてよ


いつからここに居るのかも知らずに
気がつけば僕の家はこの薄汚れた路地
嘘みたいにちっぽけなお金しか手に入らない屑拾いと
道行く人にただひたすらに頭を下げて物を乞うことで
ようやく今日を生きている


人々はこの幼き命に哀れみの目を向ける
神様に祈ればいつか救われるよと囁きながら
でも僕に必要なのは腹の足しにもならない
ありがたい聖書の文句よりも
この飢えをやわらげてくれる一切れのパン


一日が終わり夜が来て
すっかりこの身に馴染んだ
ぼろきれを纏って僕は言うのさ
「なんとか今日も生きられた」
目が覚めても世界が変わることは無いけれど
せめて夢の中では普通の子でいたい。。


「おい どうして食べ切れないほどに作るんだ
 捨てるくらいなら僕にくれよ
 おい その服まだ着られるじゃないか
 僕にはこの穴だらけの服しか無いのに
 太るのを気にしてダイエット??
 頼むからいらないなら僕らにも分けておくれよ」


自分の両親の顔さえも知らずに
気がつけば僕の家族は薄汚れた野良猫
嘘みたいに物に溢れた贅沢な国と
嘘みたいに物の無いこの国の差を呪いながら
なんとか今日を生きている


裕福な馬鹿達はこの哀れな少年に同情する
私達にも何か出来る筈と決まり文句を吐きながら
所詮お前らが見ているのはお涙頂戴の作られた映像
僕達に必要なのは
同情よりも温かい毛布


一日が終わり月が出て
すっかり見慣れた暗い路地に
身をうずめて僕は言うのさ
「違う場所に生まれたかった」
何を叫んでも世界は変わらないと知っているから
せめて今日も生きていられたことに感謝するのさ。。


おやすみ僕を見捨てた世界・・・






2006/08/09 (Wed)
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