詩人:ぺこベット
透き通った水の中で溺れている気分だ。
空は見えているのに、どっちが上だかもわからずに、ただただもがいている。
(君は、)
僕が溺れているのを、知ってるだろうか。
もがいている僕を見て、君は何を思うのだろうか。
いつからか離れていった距離と気持ちが、僕の胸の中をまだ交差している。
引き寄せた君の腕の細さや香りを、僕はまだ覚えている、のに。
この距離がもう二度と、縮まることはない。
そんなこともう、分かっているのに。
(気づいていた、)
君の気持ちが、僕から離れていってることに。
気づいていながら、気づいていない、フリをしていた。
君から別れを告げられるのが怖くて、ずっとずっと逃げていた。
そんなものではもう、君を繋ぎ止めておくことなどできないと分かっていたのだけれど、少しでも君の側に、いたかった。
(遠い、遠い……、遠い、ナァ)
想い出だけが渦を巻いて、いい加減前に進みたい足をひき止めるから、僕はこうしていつまでもここから離れられないでいる。
(とおい、とおい)
(あの頃のぼくら)
(とおい)
(ぼくらの距離)