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[64982] わくらば断章 第二段

詩人:アル


 ひとたび慈悲の心起こりて仏を拝み奉るにも金子は要るべかんめれど人の誠は買へぬものなり。
 内なる私利私欲の鬼の角を矯め得ずして、その傀儡となり果てんは最早人ならずして変じて鬼と化したるなり。煩悩の嵐吹き過ぎれば、また人に立ち還り己れ取り戻さんとぞ思はるれども失ひ散づるもまた多かるらん。
 人を鏡に己れを映しても自らの姿そこに在らざるは理にて、己れの道は己れ一人己れの為に走るなり。先頭走る者の敵は己れ一人にて較ぶるべきものには非ず。合ひ競ひ憎むべき相手は自らの邪執、内なる鬼ばかりなり。


2006/01/31 (Tue)
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