詩人:タキシード詩者
夏の匂いを感じる。
自分が夏休みという独特の時間から離れてどれ程の時が過ぎたのだろう。
小学生の時、夏休みはとても楽しくて毎日が冒険の連続だった。
退屈の言葉の意味も知らなかったあの日。
それが少しずつ形を変え、今の味気ない生活になってしまった。
夏休みもない、季節感も感じられない仕事に就いたことにそれ程後悔を抱いているわけではないが、時々昔の自分に懐かしさと羨ましさを感じる。
昔は何故あんなにも無邪気に人と接することが出来たんだろう?
汗をかきながら道を歩き、遠き日の自分を思い浮べる。
あの日の自分は心も熱く燃やしていたのかもしれない。
入道雲を見て、縁日の綿菓子を思い出し、祭りの翌日の神社に行って前日を切なく思った僕。
その僕と、今の僕の心はすっかり変わってしまったんだろうか?
こんなに近くにある筈なのにすれ違っている僕の心と心。
いつか戻れるかな?