詩人:甘味亭 真朱麻呂
心が寂しかった
ああ
なんだか空っぽになったみたいですきま風吹き込んで寒いよ
君のいなくなった家の中
「ただいま」の声は思い出の中に
幸せを願えばこそ巣立たせる愛情のはずなのに
こんなに悲しい心情
こんなに淋しい心情
もう教えられることは何もない
悔やみの残る心の片隅につぶやこう
「これでいいんだと」
幸せを心から喜ぶ気持ちと幸せを悲しまなければいけない気持ちが混ざり合って
心にもどかしさの色が生まれる
心がもどかしさの色に染まる
決してひとつにならない分離した思いが僕を喜ばすだけの気持ちを与えず
その背後には必ず悲しみがつきまとう
なぜなの どれも懐かしい笑顔で
なぜなの 幼い頃のアルバムの中の写真
こんなにうれしいのに
こんなにおめでたな事なのに
芯から喜べない
悲しい気持ちがジャマをして
芯から悲しいんだ
父から子へと つなぐ歌
だんだん大人になるたび離れていく君
悲しみはいつまで僕を素直にさせない?
日記の最後に書くはずのお祝いの言葉がうまくみつからない
そっとページを閉じてペンを置く
思い出だけが離れない
もう少し もう少し
思い出に寄りかからせて
それじゃそれじゃ
君との最後の夜楽しもうか
楽しめるかな
うまいこと言えるかな
君の父親として
心に届くようなこと
言えるかな
素晴らしいこと言えるかな
玄関を行ったりきたり
君がくるのを落ち着きもなく待ちわびる
母さん(妻)は何も言わずに僕を遠くからやさしくただみつめていた
あの日の夜
今でもそっと懐かしく懐かしく思い出すよ
思い出したら泣けてきた20世紀のはじまりの合図のようにこの家から巣立ったあなたへ贈る郷愁歌
父から子への
目いっぱいの気持ちを綴った愛にあふれた悲しけれど喜びに満ちた歌
君の喜びは僕にとっての