詩人:甘味亭 真朱麻呂
夕暮れ時の部屋
遠く聞こえる電車が線路を走り過ぎる音
駅が近いからなんだ
ふいに歌でも歌いたい気分になったから
暮れかかる薄紫色の空
窓に寄りかかりながら少し開けて眺めながら押入から懐かしのギター引っ張り出して弾いてみた
しばらく弾いてなかったからぎこちないメロディあやふやな覚えてる限りでの精いっぱい指さばき
こんな気持ち
ずっと忘れていた
けだるい毎日が
乱すものなく
ただ流れてゆくよ
あの頃から何も違わないままで ああ
真夏の窓に寄りかかりみた夢に似た
風鈴は確かあのとき誤って割っちまった
血がにじんだ破片を拾ったときつばをつけてなめたときの
あのさび付いた匂いに鼻がおかしくなった
少年のままで 居る気ですか?
僕の中に残ってる思い出はもういい加減捨てても罪にはならないから
どうしてもやっちまった時は潔くあきらめた方がいい
道を誤ったときとか
まだ間に合うなってときはあえてなにもせず冷静になれば免れるときもあるし
たまの連休に眠った眼の裏に映る夢におびやかされても
未来のカタチは何ひとつゆがみもせず
そのままの形で僕をいつか迎えにくる
どんな形のものだとしても迎えにくる
靴の裏によけいな悲しみや心配ごとが絡まってきてもこわがることはない
悲しむこともない
いつものようにいつものやり方でひとつずつ丹念に涙で洗いきれいに汚れを落とせばいいだけ
挨拶もなく去りゆくその代わりに
孤独の暗い海岸の砂浜で拾い集めた
きれいなきれいな小石と貝殻をあげる
こんな日々がただゆるやかに流れていく
ただそれを見送るのがぼくの宿命みたいだ
いつの頃からかそうなったみたいだ
それならそれでそれを受け入れるよ
イヤだというのももう面倒だしこれから別の道だとか昔から追いかけてきた夢だとかそんな途方もない夢物語