詩人:地獄椅子
一人の哀しい戦士は今日も戦場を往く。
近代化された街並みからは、汚物や不都合は見えない所に隠蔽されて、見せ掛けの美しさだけが横行する継ぎ接ぎのバリアフリー。
マスメディアは事実を公正に伝えず、情報の信憑性には疑問符が付き纏う。民衆は扇動されて冷静さを見失う。
思想や派閥に寄り掛かり、群雄割拠の勢力地図は日々塗り替えられる。
政策や実力より話題性で選挙に投票する、政治意識が低い有権者。
やがてえらいこっちゃえらいこっちゃと、痛い目に遭う。
いつのまにか我ら沈みゆくタイタニックなり。
一人の悲しい天使は今日も戦死して逝く。
膨大な量を積んだ荷物は零れ座礁し難破し沈没する船の上。
突風に帆を立て煽られて潮騒に呑まれてゆく。
舵取りのいないなんたらかんたらチルドレン。
未知なる沖の彼方、混乱と思考停止の民衆は、あれよあれよの間に予期せぬ方向へと航路を取る。
白か黒か責任の所在は曖昧で、横並びの意識がまるで呪縛のように迷走を深める。
それでも一人の哀しい戦士は戦場を往く。
誰かがやらなければ誰もやらない。
敵は己の内に在り。
同じになれない我ら。
違いという光を放て。
堕天使の黒い翼は、無力感に苛まれた不穏な灰色へと飛翔す。
大気圏外まで―蒼窮の覇者を目指すボヘミアン・ジョナサン。過酷なインディンペンデンス・ウォー。届かないかも届くかも。跳ね返され叩きつけられながら。不屈な夢は常にそこにあった。
錆た鉄剣はへし折れそうだ。
シャラララララン…星が照射して輝く。
シャララララン…黒い翼すらも仄明るく。
シャララララン…施錠された自由の鍵を求めて。
シャララララン…何億光年の遥か古の光は滅びの地平に注ぐ。
シャララララン…作られた偽の美を見抜くかのような慧眼。
シャララララン…運命の焦土から産声を上げた胎児。
シャララララン…戦士の悟性は歌う。
不思議さとても。
引き出しから現れるドラえもんを待ってたって『メシア現る』なんて来やしない。
猜疑から確信を。
プロミネントの桓久を。
前頭葉のシニシズムがマンネリを打破。右脳と左脳の会議で、パブロフの犬からメビウスの輪へ。
この世界が嘘であっても。
騙し欺く何者かがもしいても。
僕ハココニイル。