詩人:剛田奇作
タケルは年上だけど
私はタケルって
秘かに呼び捨てにしている
タケルってのが
やっぱり一番合っている
気がする
タケルは
髪の毛ボサボサで
怪しい哲学者のような風貌
お酒大好き
タバコは
わかば
めちゃめちゃ強くて
臭い匂いがするやつ
偽物ミュージシャン
ギター片手に
町をフラフラ
いつも回りに甘えてばかりなダメなやつ
お父さんのお説教が大嫌いなタケル
いつも理論派ぶっちゃって
つじつま合ってないくせに
クロブチ眼鏡の奥で
かなり偉そう
女の子ならみんな引いちゃうくらい
でも、ふとした何気ない
タケルの言葉に
私は
泣いてしまう
嘘臭くて
意味深な
よくわからん奴の言葉
私の胸には悔しいけど
なんだか切なく
響いてしまう
雨の日の暗いキャンプ場
タケルは割り箸で
イカの内蔵をワインで煮詰めた
キャンプ場の薄汚れた
ベコベコの鍋で
次第に真っ黒に焦げて
ヘドロみたいになった
みんなは覗いて
顔をしかめた
けど それは
物凄く
美味しかった
ひどく生臭くて
苦いけど甘くて
濃厚なような
クドイだけのような
クセのある味
泣いてしまいそうな味
もうはっきりと
思い出せないけど
それは物凄く
美味しかった
もしいつかまた
食べれるなら
私はやっぱり
泣いてしまうかもしれない