詩人:望月 ゆき
100円玉で買った
にんじんスティックを手に
檻の前に立つ
シマウマは
鼻を鳴らしてこちらを見る
たてがみも立派に
シマウマさん
このにんじんをあげるから
わたしにその黒い縞をちょうだいな
シマウマは無言だったが
その目は了解、と言ったように見えた
交渉成立。
わたしは
黒い縞をぐるぐると巻き取った
帰りがけに
彼のところに寄ろう
そして 彼を
この縞でぐるぐると巻いてしまおう
身動きできないほどに
さて 行くとしましょう
早くも彼が自分のものになった
ような気がして
満足気に歩き出すわたし
にんじんをくわえて
ぶるん、と鼻を鳴らし
満足気にそれを見送る
縞のないシマウマ
シマウマは
縞がなくなったら
シマウマではないのだろうが
シマウマはそれでも
幸せそうだ