詩人:剛田奇作
それを知っているのが
幸福なのかどうか
いまだに、わからない
だが、
知っている私は
菜の花を
美しいと
よい香りだと
語る
菜の花や美しさや良い香りを知らない時
どうなるのかは
知らない
知らないことに遭遇した時、湧き起こる感情よりも
名前や仕組みなどを優先させたのは
他でもない私
ただの美しいものは
ただのそれでしかない
本来、ただのそれでしかないものを、
どう受け止めようと
受け止めたものが
貴方だ
そして皮肉にも
ただのそれが
ただのそれでないと
知っている私は
貴方を
貴方と
語る
私の名を唱える歌が
不毛の海岸に横たわり
今も宿主の還りを待っている