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詩人:チェシャ猫
生まれた瞬間から観られる為に生きているのあたし
ありふれた結末の物語に添えられて
ありふれた王子様に微笑んでいるわ
世界中の女の子が憧れ妬み
気安くその名を呼んでいるの
誰の為に生きているの何の為に働いているの??
目の覚めるような美男子王子様も
毎日見せられていたら若干胸焼け気味だわ
毎晩舞台に立たされるこっちの身にもなってよ
ページが捲られる一瞬でメイクを整えて
今日も優しく微笑っているの
あたしが稼いだお金は何処に消えているの
24時間不眠不休で働いて使う暇など無いのだけれど
勝手にストラップにするのは止めて
携帯の横にぷらぷら提げられて女子高生の長話なんて聞きたくないの
勝手に着包みにしないでよ
あたしはそんなに寸胴じゃない
こんなにも辛い仕事を
辞めたくても辞められないのは麻薬のせいよ
繰り返し訪れる快感に身を委ね
あたしはとっくに中毒者
こんなにもありふれた御伽噺で
どうしてそんなに無邪気に微笑えるの
あんた達が口を揃えて呟くめでたしめでたしの言葉と笑顔を求めて
気付けばまた舞台に立ってしまっているじゃない
繰り返す同じ日常には飽き飽きだけれど
あたしが幸せなフリすることで名前も知らない何処かの誰かが幸せになれるのなら
うそ臭い演技も悪くはないわ