詩人:望月 ゆき
花びらを一つも残さず
桜は散り去った
わたしはそれを
どうとも思わず見上げる
あの人は べつだん
理由も述べないまま
さよなら と言った
理由というのは
聞くことによって 結果が
かわってくるのでなければ
意味はなさない
と わたしは思っている
あの人の背中が
完全に見えなくなるまで
上を見上げていたので
わたしの視界には
葉っぱだけの桜の枝と
その向こうの空しか
なかった
桜は 散り去った
わたしは それを
どうとも思わない
桜はまた 咲く
来年もまた
桜はまた 咲く
それを約束されている
おいてけぼりの
わたしをよそに