詩人:遥 カズナ
確かな事はいつでもこの手のひらの中で感触となって分かっていて
ガサガサとした、鋳造したての硬い金属を
それこそ舌で舐めても気持ちのよい硝子鏡の表面へ近づけていく
高速で回転する工具は
気を抜けば技巧物を弾き飛ばし、目にでも当たれば失明させるだろう
学校は夏休みだ
今年は家族でカヌーに乗る予定でいる
キャンプ場にテントを張り夕暮れはバーベキューをしながら迎えたい
日がくれたらなら、花火をやる
子供達のはしゃぐ様子が目に浮かぶ
宝くじが当たるといい
マンションのローンを返済して
車も欲しいし、旅行もいい
とにかく贅沢がしたい
金属は研きあげる途中途中、持ってはいられないほど高熱になる
素早く、水桶けに突っ込み「シュゥッ…」と水蒸気があがる
確かな事は
いつもこの手中にあって
硬く、熱く、そして
そのしんどさに
実感がある