詩人:あいく
それは梅雨の雨の日の事でした
私が傘を手に土手を歩いていると
蕗の葉を傘にして歩く蛙に
でくわしたのです
その蛙は「やあ」と
声を掛けてきたのですが
私はその蛙の正体が
小人妖精の変化だと見抜き
私の村の教えでは
小人妖精に話し掛けられても
耳をかしてはいけないと言う
教えもありましたので
無視して歩きました
しかしその蛙は私のあとを
ついてきてなお話し掛けます
「つれないなぁ、ねえ今日は
いい話を持ってきたのさ
なにちょっとした
儲け話なんだけどね」
ちょっとした儲け話、ね
それに釣られれば後が怖い
誰でも知ってるはずなのにね
それでも蛙は言葉巧みに
誘いを繰り返しました
しかし私は傘を打つ雨の音が
蛙のキーキー声よりも
よっぽど心地よいや
などと考えながら
なおも無視を続けて歩きました
ふと気づいた時には
蛙はもう後をついて来ては
おりませんでした
蛙の姿て油断させるのも
甘い言葉で誘いを繰り返すのも
そんなもの見え見えなのに
なんであんなのがいるのだろう?
やっぱり騙されるやつも
いるのだろうな
空にわずかに明るくなると
雨も止み間をむかえるか
川辺にケコケコと
本当の蛙の鳴き声を聞きました。。。