詩人:夕凪
「優しさが一番」
幼き頃から
嫌というほど
母に言われてきた
言葉の一つ ‥
父と母の教えは
子供心に聞くと
まるで違っていた
父は、
強くあれと言う
すると母は
弱くてもいいと言う
父は、
常に歩めと言う
すると母は
立ち止まっても
いいと言う
父と母の教えは
まるで正反対な
気がしていた ‥
けれど、
2人の教えは
気付くと私の中で
結び付いていて
それは
長い歳月を
共に生き歩んだ
夫婦だからこそ
言える
信頼し合った
教えだと知った ‥
私は
母の教えが好きだ
皆、血を分けた
身内だと思って
優しくあれ。
どんな状況に
立たされても
ひたすら
正直者であれ。
全てに
飢えたとしても
決して人のものを
奪ってはいけない。
この3つが好きだ。
素朴で当たり前で
けれど大人になる程に
この3つが
難しく尊い事だと
思い知らされる ‥
だからこそ私は
この教えを忘れずに
母の遺影に
日々手を合わせ
約束する ‥
「優しさが一番」
特にこの言葉は
何百回聞いたか
分からない
母の生き様は
まさに
優しさそのものだった ‥
そして、
その優しさが
どれほど強いかを
証明して死んだ。
私にはきっと
生涯敵わないだろう ‥
それでも、
この3つの教えは
片時も忘れる事なく
私はこの先もずっと
生きていく ─‥。