詩人:チェシャ猫
薄汚れた猫が歩いてく
尻尾を立てて歩いてく
ほんの少し指でつつけば崩れる世界の端を
何食わぬ顔で歩いてく
薄闇被さる路地裏から
片目で見た世界には何が映ったのか
年代物の交差点が吐き出す
代わり映えの無い人の群れに
溜息一つ捨てて街を抜け出した
日に日に現実味の薄れていく退屈な空を
逆立ちして覗いたら明日が見えた
叩けばカラカラと音がしそうな空っぽの脳みそに血を巡らせて呼吸を止めたら
少しだけ世界が色付いた
薄闇犇く路地裏で
左利きの目が見た世界には何が映ったのか
狂った歯車が用意した
溜息一つで飛んで行く二束三文の舞台装置を
吹き消し街を抜け出した
左利きの目が見た薄っぺらな世界を盗んで
東の門から逃げ出した・・・・・・