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[65586] わくらば断章 第四段

詩人:アル


 節分過ぎにければ、彼方此方に鬼の外に弾かれあぶれたるらん、不可思議なる事あり。

 我が貧しき庵は戸口に人の暫し立てれば自ら楽の奏でられて、内なる画面にて訪なふ者誰なるか知らする仕掛けあり。先程来、頻りに音のすれば、画面を見れどもさらに人の影さへなし。表はくるぶし近く迄雪積もりてあれば、影は見えずとも足跡だに動くらむとうち見守れど、其の兆し一毛も無し。「妖し」と思へども恐るるにはあらず。鬼は人の魂にて、人は死ぬれば等しく神仏なり。されば人を害する者にあらざるは道理なりと存じ候ふものから、寂しとあらば我方につれづれ語りに参り来よとこそ思ゆれ。


2006/02/05 (Sun)
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