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[62324] 奈落からの黒い声

詩人:地獄椅子

どここから聴こえるヘルスキャット。
赤子は何も知らず眠りこくる、今起きている悲しみ、明日訪れる苦しみ。いつか人類に取って代わって、別の種が繁栄すること。宇宙の一切が無だということ。
何も知らず赤子は揺り籠に揺られて寝息を立てる。
純粋ということは、なあ。ある意味残酷だよな。
背負わされてる運命に狂わされる理性。否定も肯定もできない意志というのは、ある意味幸せであるのか?

遠くから聴こえるヘルスキャット。
皮肉や矛盾や不条理に対して怒っても悲しんでも、鳴り止まない耳鳴り、地獄の底からの遣り切れぬ呻きのようなヘルスキャット。

赤子は夢の中で、どんな世界を見てる?

天界の星の窓から、子宮の管を通り、外界へと至った一個の旅人よ。
愛という灯を消したもうな。
風前の弱く小さな燈であっても、命を賭けて守り抜け。
その強さが、己に有るうちは神聖なる輝きの主であること、汝は解するが良い。



銀河鉄道を降りた宮沢憲治が星めぐりのうたを口ずさむ頃。
生を享けた喜び。
ゲヘナの炎に焼かれても、その身悶えさえ、刹那の刻印なのだ。

八百万の神々の地で、百八の煩悩を植え付けられつつも、留まる事無きブリリアントワールド。
随伴するアンビヴァレンツ。屈折したコンプレックス。光と闇のイニシエーション。二重螺旋から成るDNA。

全ては言葉では言い尽くせない領域にある。


値札のない魂を切り売りして、五万とある遣る瀬なさを、暁の明星に繋がるアーチへ。コロンブスが発見したかのような、新しい舞台へ。
2001年宇宙の旅から未知との遭遇へのミドルウェイ。
悲喜交々命のリレー、繋ぐレッドリバー。
寂しがりで寒がりな者共の修羅の庭園。


被害妄想の産物であるヘルスキャット。
人が世界を見つけたのだ。
そこにある痛みも悲しみも。
赤子は引き継ぎ尚、見つけ出す。
愛を。喜びを。
この悲痛の世界に於いても。

2006/01/07 (Sat)
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