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[11730] 入り口の鍵

詩人:望月 ゆき

透明な箱の
壁づたいに歩く

出口らしきものは
すでに発見した

透明な箱の中には
どこまでも青いような空が
ところどころに
ふわふわと白いような雲を浮かべて
広がっている

透明な箱の中では
誰もが口角をあげて
会釈しながらすれ違う
時には 白い前歯がのぞかせたり

丘の上では
プチトマトが赤い実をほころばせ
それを狙う小鳥さえいない

ぼくは ぼくの幸せのために
ぼくは 箱の中を夢見る

透明な箱の壁づたいを
もう何十周しただろう

ただ
入り口だけを求めて

人はみな
入り口の手がかりを知っている
入り口の鍵を手にしている
それを意識しているか
いないかの違いだけだ

誰もが必ず持っている

それを思い出すときは
きっと

人が ひとつ
まちがいに気づいたときだ

2004/05/07 (Fri)
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