詩人:チェシャ猫
祈っているよ
色彩も薫りも失せた花弁が
忘れられた並行世界に音無く散在したとしても・・・・・・
隙在らば引き擦り込もうと手招く
表層だけが色付いた輪郭の曖昧な誘惑
手にして舌を這わせその味を確かめてみても
無機質な刺激が僕を狂わせる
溢れ出そうとする感情と感傷に理性で蓋をして
崩れ出そうとする世界の秩序を保っていた
言葉一つで選べた筈の
手を伸ばせば貴方をなぞれる並行世界
繰り返しこの身をなじっても変わらぬ今と
二度と交わることは叶わぬ失った世界の面影に溺れ
響かぬ声でその名を呼び続けている
願っているよ
色彩も薫りも失せた花弁が
貴方の微笑う並行世界に届かぬように
祈っているよ
涙と後悔で彩られた花弁が
忘れられた並行世界に音無く散在したとしても
微笑っているよ
色彩と薫りに飾られた貴方の居る世界が
僕と歩む並行世界よりも美しく在るようにと・・・・・・