詩人:甘味亭 真朱麻呂
こんなにした奴をしに至らしめても満足感も感じられず嬉しくないのはもはや人間の心を失っていたのもあるが
それ以前に人間の心を僕らはいつの間にか自ら自分たちの身の安全ばかりを考えてたとえ容姿は人間に戻らないにしても心までは植物にはならせてはいけない人間の心のままでありたいと思う見失ってはいけないはずだった気持ちさえも捨て去っていたことに終わってしまってから気づいたからだ
たとえ罪深い僕たちよりも奴の方が罪が重いからと自分たちの罪をなかったように隠蔽することはできずどんなに奴の罪が重かろうと自分たちの罪をその中に言い様に混ぜ込んでわからなくしようなどという愚かな罪をまた被ってしまった僕らはもっときっと罪深いのだろう
罪の上に罪を重ねた心はずしりと崩れ去りその重さで気持ちさえも憎しみに変えただ不乱なまでにこの鋭く尖った蔓の切っ先を振りかざしたのかもしれない
ただ僕らは奴のためささやかな餞別として小さな墓をたて
冬の寒さに凍り付かぬように奴のいない静かな部屋で水を僕にあげながら楽しそうに話す老婦人のその生い先のない短い生涯からでる老成した人間ならではの笑みを浮かべながら
具合はどうかしらとただぼそぼそ言ったあなたの言葉をあの風景を頭の中にだいたいの場面として描き思い出していた
と振り向けばもう君は立ち尽くすだけの毎日に力を使い果たし力なく頭の葉も僕があげた花飾りもしおれ疲れ果てぐったりとただ静かに息絶えていたのだった
僕は奴の墓から少しはなれた別の見晴らしの良いこの場所に君の亡骸と一緒に根を張らしこの長い冬を越そうと思う
見おろした街の中にはただ幸せの笑みがかすかに歌となり聞こえ春になる頃には僕も君と同じに君のそばで息絶えているだろうが
君がその腹に宿した人間の子供はあの家族にまかせるとします
あの家の玄関にメモ書きと私たちの子供を暖かい