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詩人:トケルネコ
二月 北の風に乗せられて
世界を丸くなぞった象使い
夜の煙突から覗く 淡く白い波濤の森
パイプの隅にいざなう光
灰で象る もう少しと云う
言葉の石英 ただ曇らす神サマ達の午後
真綿のエプロンは静かにほどかれ 柊の風に踊っている
アカギレの女神を箱庭の宇宙に運ぶため 憩うために
三月 老いた甲羅の大地に
無重力 銀の葩と粉雪が舞う
少なめに入れたティーカップに浮かぶ波紋
時は重病人から見捨てられてゆく
太陽のストーカーにだって戻りたい夜がある
廃屋の無言電話に風も知らない緋蓮が咲いては、ひっそりと散る
四月 誰もトビラを傷つけては
あのアキラメを欲しがった
もやわれた舟に双子のペンシルが眠っている
端をまだ知らない世界は実話を望み
抽象を嫌った