詩人:ありえす
写真帖を眺めては明かす、長雨でした
灯りを消すのは艶のある肌が静まるころ
記憶の遠い、とおい向こうがわで
からからと映写機がまわります
銀幕にはしる斜線や点点は
瞳に積もる、長雨の影響です
*
遮光するカーテンが揺れ
竹帙が色を変えるとても、ひろい
書斎の端で眠るのは
水夫の漕ぐ波形の紋に誘われて
脱け殻を置いたきみでした
円環の外にいるぼくは
小説から漏れる声を聞き心をざわめかせては
陽に囲われた睡蓮の花弁の中心にいるきみを
ただ見入るばかりなのです
風にふわりと、木目を渡る栞は
籠に落ちる葉と重なり
輪郭はきえゆく色に包まれます
それがとても
*
向こうの月光は、長雨を望み
兎の耳が羽音のように