詩人:老女と口紅。
じじいの春は やな季節
道端へフラフラと歩きだす
ばばっちがハラハラする そんな季節
じじいの夏は やな季節
帽子もかぶらずに日射病
ばばっちがオロオロする そんな季節
じじいの秋は いい季節
のんびりと縁側で日なたぼっこ
ばばっちがそっと茶を入れるそんな季節
じじいの冬は やな季節
心臓が冷たくなる そんな季節
ばばっちの心臓も冷たくなる そんな季節
そんなじじいが言っていた
(八十八にゃ体が勝てぬ…)言いながら昔を思い出す
ばばっちは言った そんなじじいを見て…
(来年あたりは死ぬかもしんねぇ〜)
今はもう寝たきりで口もきけない
ばばっちは泣きながらこう言った
(先生や生命維持装置を外してけろ)と…
ばばっちの
最後の愛だった
最後の愛だった