詩人:望月 ゆき
「風船」
つばめの急降下にも
動ずることなく
ただよう風に押されて
やがて 点
水面に映る丸い残像
「滝」
世の中のすべての音を盗んで
アピールするものは
引力 あるいは 重力
無数の直線を描きつづける
気まぐれに
虹をたずさえて
「シャボン玉」
世界をさかさまに見てみたら
悲しみも 苦しみも
泡となって消えてしまった
高架線の向こうにいるであろう
誰かにも 見せたい
「扇風機」
主役にして脇役
顔面からこぼれおちたものは
風 あるいは 風
もう ぼくは
きみ無しには生きられない
脇役にして主役
風をそっと裏返すと
涼、涼、と風鈴が鳴く
こっそりと
夏の残り香をなつかしむ
ぼくのもとに
夏はまた
訪れようとしている