詩人:野上 道弥
学校の課題で作ったこの木箱が生まれたのが12年前
その木箱にはノートを千切った手紙が入ってた
そこだけ時は止まってた
開けて見返せば懐かしさの塊が顔を覗かせていた
まだ学生服を着ていた頃は妙に純粋な感性と
青臭い恋愛がとめどなく溢れていた
「好き」を「好き」と言える気持ちは何時頃どこかへ行ってしまったのだろう
あの頃の僕は今の僕を想像出来なかったに違いない
それほどまでに僕らは大人への道を歩いていたんだ
あの時愛した人達とは今会うことは無いだろうけれど
あの頃愛した人達も今の僕を想像出来ないだろう
僕は今幸せです って
胸を張って言えないから逢えない事が幸せだ
でもあの時愛した人達に会ったら
遠く離れた所に愛する人がいる とは言える
あの時見出せなかった答えはその人が持ってると
胸を張って言えるだろう
この木箱はまた眠らせておこう
次に開ける日が何時になるかは分からないけれども