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詩人:栢徠
フェンスの外側に立って目を閉じる
そのまま一歩前に出れば
身体は風に包まれる
心地よい浮遊感は一瞬
うるさい程の風の音を聞きながら私はおちてゆく
落ちる
堕ちる
それはいつまでも続く気がして
ふと目を開ければ地面はもう目の前だった
衝撃と痛み
それもまた、一瞬
生命の証は私を見捨て
溢れ出したそれは私を染める
それは私の生きていた証
そこで、目を開ける
目の前には変わらす目を閉じる前と同じ光景
今日も私は死んだ
日課になりつつある『自殺ごっこ』
ほんとに死ぬ勇気などなく
むしろ死ぬつもりすらない
私はゆっくりとフェンスの内側の世界へと戻る
向こうの世界の私はもう死んだから
理解なんかされなくていい
理解してほしくもない
だって、理由なんて無い
ひたすら私の中の私は死んでいく
きっと、明日も私は死ぬだろう
(でも、心のどこかで救ってほしいと願っていた)