詩人:剛田奇作
大地に 棒が 弱々しく投げ出されていた
棒の先端は 五つに分かれていた
命はそれを手足とよんだ
こうして宇宙一
分類を気にする生き物が生まれた
この生物は非常に奇妙な性質を持ち
分けることは大得意
反対にひとつになること は大の苦手
怖いので境界線を放り出せずに今日も
その貧弱な四本に巻き付けている
そうして
境界線を大地にぶら下げ
何気なく時々
空を見たりしている
本当に
大地に 何も無かったころ
人は、毎日何時間も空を見上げて
宇宙は家族で
同じように挨拶を交わしていた
けどもう誰も 空に挨拶するものはいなくて
携帯電話の数え切れない仮想空間のなかで
笑いあったりする方がまだ人らしいと信じて
その仮想空間を自在に飛び回る
境界線を悲しげにはためかせて
大地に 棒が
弱々しく投げ出されていた