詩人:タキシード詩者
「アンタの事なんて好きになるんやなかった!」
貴方はそう言って精一杯の力をこめて両手を私の胸につきました。
「ごめんね…」
傷つけたのは私のはずなのに、何故か私の目から一筋の涙が流れました。
「ずっと一緒やってゆうてたんは嘘やったんやね」
震える声。
下唇を噛み締めるのは、貴方が涙を堪えるサイン。
貴方は弱さを見せるのが大嫌いだから、私がこれ以上何を言ったとしても貴方のプライドを打ち砕くことしかできません。
本当に好きだった…
本当は今でも大好き…
その言葉は貴方を想うなら言ってはならないんです。
背伸びをして貴方に顔を近付けると、貴方の吐息が私に甘くかかりました。
貴方の首に手を回しそっと貴方の唇に私の唇を重ねました。
「さようなら」
か細くしか出なかった私の声。
貴方には聞こえましたか?
後ろは振り返ってはいけない。
もう2度と貴方と会ってはいけないのです。
私が貴方を想う気持ちを伝えてしまったことが、貴方を傷つけることの始まりになるなんて思いもしなかった。
「アホ…」
小さく貴方の声が背中から聞こえました