詩人:アル
…たぶん
突然変異の
ピュア原人2頭が
数十万年くらい前に
奇跡的に出会って
今のぼくらに連綿と
繋がっている。
周りはみんな心通わぬ
ケモノばかり。
弱肉強食の掟の下、
慢性飢餓と
命の危険に晒され
明日の見えない不安に
怯えながら
孤立無援の2頭は
身を寄せ合って
絆がより深く強く
結ばれていった…
ねぇ
聞いてる?
ん?
この新しいルージュ
どう?
あぁ…いんでない?
テキトーな返事
てか、さっきから
えらい時間かけてるけど
それは
誰に見せるためのメイク?
オレ、
きみのスッピン
知ってるから
オレのためじゃないのは
確かだよね?
どうせ一緒に歩くなら
キレイにしてる方が
良くない?
スッピンでも
充分イケてるよ
ハイ、お上手
で、その年度末工事
いつ頃終わる予定?
くらっ!
…オスが
鷲掴みにした紅花の束を
不器用に差し出した。
メスは
人類初のプレゼントを
受け取ると、
おもむろに
ムシャムシャと
喰い出した。
紅色に染まった
彼女のクチビルを見て
オスは胸がキュンと
収縮するのを感じた。
それは決して
空腹のせいではなく
初めて経験する感覚だった