詩人:甘味亭 真朱麻呂
思い出とは思い出されるそのたびに輝き取り戻し 幾多の日々の繰り返しの中でどれだけ色あせて過ぎ去り古くなって見えなくなるくらい遠く遠くなっても
輝くんだ 輝き取り戻すんだこの一回の思い出すことで積み重ねてきた様々な記憶に古い場面また比較的新しい場面そのすべてを手繰り寄せるように心の映写機が映し出す僕の思い出 すべて思い出せないのは知っている思い出せないそのわけも思い出せないくらい記憶に古すぎて記憶から完全に知らない間に葬られてしまった場面があることも
瞳のスクリーンはくまなく絶え間ない日々を断片的に早送りしたり時々ゆったりとその思い出のひとつひとつをコマ送りするように事細かに記憶に忠実にそのものを映してる
その時は新しかった記憶ですら時の流れの前では為すすべもなくだんだんゆっくりとその不思議な時に残酷なまでに早い流れの中で気づけば振り返るくらい遠く流されていってしまうものなのさ
現にそんな流されてしまったものがたくさんたくさん思い出せば数かぎりないほどある その内容の方は思い出せないがあったのだけはなんとなく憶えていてなぜかもどかしい名残としてあるのは確かな事実で 忘れもしないきらめく思い出 だんだんほこりをかぶり古くなっておいぼれた自分の頭でも…作っていきたいのは抱きたいのは振り返るたび色あせて見えなくなるような悲しい思い出じゃなく色づいて輝きを増す 増やしたいのはそんな思い出や記憶の方さ 本気でそう今言い様のない痛切なまでに今その時の流れの大事な思い出の形を作る真っ只中に僕はいて まさに今その真っ最中さ 言うなれば 思い出という僕という自分のただこの世でひとつの題名のない一遍の汗と涙で制作される感動を呼ぶであろうそれぞれの場面からなる作り出す僕1人の監督に対してカメラやスタントマンも僕がすべてやるまさにこの世でもっとも忙しく世話のかかるありえない巨編