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[162863] あの人の唄

詩人:どるとる


積み木のように
心に積み重なってゆくのさ
不安とか期待とか
責任とかに追われて
思わず逃げ込んだ部屋に望むような救いは無かった

イエスとノー以外の選択肢は許されない世界の中で僕は独り唄うよ

この街で一番 高いビルの屋上にのぼって
そこから楽園に向かって落ちてった誰かが最期に見た景色を眺めたら
何が見えるだろう?

有り体な生活にあふれた生ぬるい空気を
追っ払うような
酸味のある愛を
僕はひたすら求めてさまよい続ける日々

胸を切り裂く つむじ風
ここから望んで落ちたあの人を包んでいた風

もうこの世界にはいないあの人に唄うよ

この街のどこにも居場所の無かったあの人が一番 好きだった景色を見ているよ
楽園なんか無いけど
死んだほうが楽だったならあの人にとってここから落ちることで死ぬことは生きることだったのかな

メロディは流れ続ける
あの人の生きた証を伝える賛美歌

夜風が切り裂いた 名ばかりのプライド

イエスでもなくノーでもない許されざる
選択肢を選んだあの人は幸せだったのかな?

この街で一番 高いビルの屋上にのぼって
そこから楽園に向かって落ちてった誰かが最期に見た景色を眺めたら
何が見えるだろう?

有り体な生活にあふれた生ぬるい空気を
追っ払うような
酸味のある愛を
僕はひたすら求めてさまよい続ける日々

影を持つ者たちへ
あなた達が死んだら
影も形も無くなるんだ

それを知っててあの人はそれでも死を選んだんだ

黒い賛美歌が流れる
白い世界の中で

不思議なぬくもりの傍であの人はきっと今も笑ってる

そんな気がする。

2010/12/09 (Thu)
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