詩人:おるふぇ
夜風が首に絡み付く
嘘みたいな笑顔で
塗れた心に影を落として
今日という一日は
跡形もなく
過ぎて行く
「最近、涙もでないんだよ」と
表情もなく
あなたは言うから
どうにかできるものなら
どうにかしてあげたいと
朧げな月の夜に
身体を抱き寄せるんだ
「なんにもない」と
移ろい流れる
時の川に溺れて
助けを求めるけれど
この夜は止まらず
わたしはただ
抱きしめるだけ
風が泣いているみたいだ
まるであなたの代わりに
「さよならバイバイ」
別れの唄を
あなたのその
美しい唇が
汚れてしまわぬよう
歪んでしまわぬよう
この抱擁だけでは
満たせませんか
届きませんか
あなたがあなたを
生きられるように
艶やかな唇の色が
「悲しい」
「苦しい」
「虚しい」
「淋しい」
そう口を開いた時は
わたしはその唇を
封じてしまおう
あなたの代わりに
涙を流して
抱擁とキス
それだけで
満たせますように
届きますように
人は温かい
人は優しい
存在は尊い
存在は素敵
あなた自身が
傷つけたあなたを
暗闇に佇む孤独を
わたしは包む
夜風よりも
ふわり
その唇が飽くまで
何度も伝える
言葉ではなく
行為と感触で
「永遠に愛してる」と