詩人:鈴砂
長い手紙を書いていた
滅多に持たないペンを握って
「お元気ですか?」
「北海道でも、遅咲きの桜が咲きました」
沢山書いた
何枚も
最後はこう締め括ったのを覚えている
「また会える日を楽しみにしています」
丁寧に折り畳み
それを封筒に入れ
そしてそれきりになった
長いこと手紙を出していなかったから
すっかり忘れてしまったようだ
君の住所や郵便番号
本当に書きたかった事
切手の貼れない手紙は
今も机の中にある
手紙という記憶に逃げている間に
思い出の中に隠れていた間に
大事な物を無くしたらしい
だから今度は
その記憶まで逃げていかないように
奥に仕舞い 鍵を掛け
大事に大事に
仕舞ってある