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[163009] 正直者の唄

詩人:どるとる


言葉は嘘つきさ
どんな真実も
簡単にねじ曲げられる

態度で示しても
疑われる世界

愛されるすべをなくし
愛するすべをなくした
この世界では
嘘こそが真なのか

なぜ、そんなに
頑なに良い人をつらぬくの?
誰かが言った
そんな一言

良い人になんかなりたくない
ただ僕は嘘が嫌いなだけなんだ
だから良い人みたいに思われてるんだよ

僕なんか良い人じゃない
僕なんか愛される資格もないし
人を愛する資格もない
愚か者さ

まかり通ってしまえばそれは嘘ではなく
真実よりも真実味を帯びた真実以上の真意なんだ

ロマンス散りばめりゃ きれいごとばかり
こぼしちまうけど

僕はやっぱり
嘘は嫌いだ
だから嘘つきも嫌いだ

もう一度だけ言うが
僕は良い人なんかじゃない
嘘以外なら
どんなわるいこともしてきたし
これからもするつもりだ

罪さえ隠さないよ
逃げも隠れもしない

でも嘘をつけない分だけ 何かを失うだろう

嘘のない愛も
嘘のない夢も
有り得ない世界で

嘘をつかずに
どこまで
本当の気持ちを
唄っていけるかな

詩人たちの本音が
錆びていくその時
正直者は嘘つきになり嘘つきはさらに嘘つきになる

巧妙な嘘で真実さえ
隠してしまう
黒いビロードのように正直者は深く傷つくだろう

正直者の唄も

嘘つきにかかれば
嘘の愛がまかり通り
嘘の世界が築かれる

でも僕は正直者だから醜さも本音も隠せない

嘘つきよりも嘘つきさ

正直者のはずなのに
正直者でいようとすればするほど嘘臭くなっていく僕の唄

疑わしくなる僕の言葉

正直な心だけでは
見えない真実があるならば嘘だって十分真実なのだろうか

今もって解らないことなんだ。

2010/12/12 (Sun)
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