詩人:トケルネコ
ウランバートルで開店した紫さん
お洒落なセレクトショップで、日夜パリスの最先端モゥドを棚に飾ってる紫さん
でもそこはバートル。ウランなバートル。筋金入りのモンゴル
夜な夜な狼が徘徊しちゃう未来都市
ピクミンが大量発生したっておかしくない空気感
終わりは近い、と予感した紫さんは店を閉め大平原で巫女をやりだした
獣の骨を炙ってはヒビの形で未来を占う昭和風味なやつだ
そこへ日の本から一人の快男子がやってきた
いかつい巨躯と鋭い眼光はその男がただものではないことを物語っていた……
父だった。
父はもう帰ろうと言った
紫さんはいやや、とだだを捏ねた
父は、いいから康子、もういいからと何度も言った
ひどく疲れてギラギラした目を微かに濡らしてもいた
紫さんは、今さら帰られへん…と小さく呟いた
父は笑って、みんなぁ心配しとるぞと紫さんの頭を優しく撫でた
紫さんも涙目で笑って、…国、間違えたわって無数の骨片を空にばらまいた
それは青空にまるで儚い花びらのように舞って
彼女の未来を確かに祝福していた
【おわり】