詩人:遥 カズナ
指を噛んでみる
そのまま噛みちぎれるくらいまで強く噛んでみたい衝動があっても
歯型が残るくらいまででやめてしまう
夏休み
息子とのシュノーケリング
手を繋いで、足が届くわけもない水深になるにしたがい
私の手のひらを強く掴もうとする柔らかな指先の小さな感触
不安にさせないように
いったん海面に頭をあげさせる
夕日になる寸前の日差しが
まだ真っ青な頭上を擦り抜け
ビーチから
程遠くない場所に借りた白いコテージを照らしている
その、私の指先が指し示す方角を見つめた様子が
落ち着きはじめたのをみはからい
もう少し沖へ息子を誘う
ためらうな我が子よ
面白い事はたいがい
不安の向こう側で
指をくわえて待っているのだから