詩人:どるとる
いつからか心にぽっかりあいてしまった
見えない穴ぼこ
すきま風がいやに冷たいんだ
独りの夜は
言葉は死んで
役に立たない
悲しみにひれ伏して
絶え間なく
泣くしかないね
舞台裏では
もう今日の後片付け
神様は帳簿の整理に忙しい
だんだん朝に変わる
だんだん歳を重ねる
だんだん死に近くなる
だんだん涙もろくなる
大切なもの
そうじゃないもの
大切なこと
そうじゃないこと
その全ては
幻のようなもの
考えることさえくだらない
だけれど僕らは
悲しんでしまう
怪しんでしまう
人間なんだ
ぜんぶ残らず
くだらないことばかりだ
余計に悲しくて
余計にうれしくて
感情があるから
だれかを愛し
だれかを憎む
この心
夜の闇のなかへ
朝の光のなかへ
僕の命は
少しずつ
借り物だから
返していくよ
やがて
完済するよ
くだらない時間は
くだらなくなんてなくて
一度しかない
素晴らしい時間だ
きっと
こうして笑ってる今も
花を愛でてる土曜日も
いつもいつでも
くだらないこととはいいながら
その大切さを
何より知ってるから
くだらないことであればあるほど
愛しくなる
尊くなる
それがほんとのくだらない唄
衛星が弧を描き
空の彼方へ
消えていく。