詩人:どるとる
返しきれない感謝は
どんな言葉でも
返しきれないから
どんなことをしても
返しきれないから
限りある時間の中で
返しきれない感謝を返せるだけ返すんだ
僕が生まれた日のことを今も思い出しては
時おり真顔で話す母がいます
それはそれは幸せな日だったと母は言う
おなかの痛みをこらえて母は僕を抱いたとき
言葉が出ないくらい嬉しかった
そう言っていたんだ
大切なことはいつも気づかずに見過ごして
あとから考えたときやっと振り向きざま
気づくんだ
あのころから考えたらすこし年をとった母に僕はまだ素直になれなくて
本当は素直になりたくて
もどかしい気持ちで毎日顔を合わせています
僕がもし パパになったらきっとあなたが教えてくれたように
勉強より 遊びより何より大切なことを
教えてあげようと思っているのです
あなたが教えてくれたことは数限りなく
きっと教えきれないかもしれないけれど
僕は僕なりに僕の思う大人に少しずつ近づいてるから
心配しないでね
あなたからもらった愛や優しさや厳しさはちゃんと僕の中で人知れず生きてるよ
それを誰かに今度は僕の子供に愛する妻に
捧げたい
そう思っています
あなたがママで
僕がそんなあなたの子供で
ママに抱かれてる僕が君のパパです
はじめまして
どうぞよろしくね
大切なことは
頭より心を育てること
人のために涙を流せて
人のためにからだを張れて
人の痛みのわかる
そんな優しい人になってください
ママの遺伝子が君を優しくするなら
僕の遺伝子が君を少し不器用にするだろうけど人間は頭より心だよ
パパが教えられることはそれくらいだな
こっちにおいで
君が生まれたその瞬間から君は僕たちのものです
さあ 高らかに産声あげながら笑ってる君は望まれてここにいるひとつの命。