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詩人:どるとる
あんたのことを思う気持ちはひとりになっても変わらない
まだまだ長生きするけど あんたのとこにはかならず近いうちに逝くからね
待ってておくれ
おじいさんは
おばあさんが死んでからも
毎日毎日暇があれば
仏壇に手を合わせ
おばあさんとのいくつもの思い出を思い出してる
おばあさんは流行り病で死んだ
あっけないもんだった
あんなに愛してたのに
おじいさんは偏屈で
頑固なとこもあったけどおばあさんが病気をした時から
人が変わったように
優しくなった
毎日笑ってた
自分にできることは小さいことだけだ
だけれどおじいさんはおばあさんのためにできることはなんでもした
やがて街の木々が紅葉をむかえるころにおばあさんは死んだ
おじいさんは一晩中
それこそ一晩中
泣き続けた
声がかれるまで
人の一生なんて短いものだとおじいさんは嘆いた
こんな別れをするくらいなら
どうしておばあさんにもっともっと優しくしてあげられなかったのかと
おじいさんは言い続けた
それでもおばあさんは死ぬ少し前に
かすかな意識の中でたどたどしい言葉で言ったんだ
あなたといれてよかった
その瞬間おじいさんはおばあさんがどれだけ自分を愛していたのかに気づいた
いつもただそこにいるだけだと思っていたよ
自分が思ってたより
おばあさんは
自分を思い
愛してくれていたんだ
おじいさんは今でも
病気ひとつしないで
おばあさんと過ごしたこの家でひとり
いつもいつも
笑っていたんだ
おばあさんが生きれなかったぶんまで
生きようとしてるんだ
今日もおじいさんは
仏壇に手を合わせて
おばあさんの遺影に向かって言うよ
あんただけを愛してる
80歳からのラブソング
年寄りだって
唄えるラブソング
おじいさんから
おばあさんへ
いつまでも
変わらない
一途な思い
80年分の
愛してる
伝えたい。