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[164009] ただ一面に真っ白な世界

詩人:どるとる


風が僕の胸にぽっかりとあいた穴をおじぎもせずに通り抜けるたび切ないな

傘を差してても
悲しみは透明だから
傘を突き抜けて
からださえ突き抜けて
僕の心を容赦なく濡らすんだ

行きずりの旅で出逢った名前も知らないふたりはゆらゆら揺れながら
ぼそぼそ小言こぼしながら
不確かな愛を
有らん限り全力で受け止めた

冬がだんだん寒さ際だたせて
その色も鮮やかになってゆく
ただ一面に真っ白な世界だ

見えるものは
白い雪と
白い時間と
その白さの中で
唯一鮮やかな色を持った
君という一匹の蝶々
自由気ままに
飛び交っている

僕はマフラーを
きつく締めすぎて
苦しさに
あえいでいる
そんな姿を
見たとき君は
そんな僕でも
大好きなんだと
手を握ってくれる

それがきっと愛なんだね

ただ一面に真っ白な世界
白い思いは
やがて
鮮やかな色に染まり
君に届くだろう

桜色の雪がこの街に降り注ぐまで
君は僕の胸の中で
泣いていればいいよ
君は僕の胸の中で
笑っていればいいよ

やがて春はふたりを迎えに来るから
その時が来たなら
手を繋いで
分厚いコートも
邪魔なマフラーも
脱ぎ捨てて
ふたりで
桜を見に行こうね

そんな約束さえ
今は白く染まってしまう

ため息さえ隠せない
純度100%透明な冬
ただ一面に真っ白な世界

嘘も言い訳も
透き通ってしまうね

だから僕は本当の心で君に言うよ

ひとつしかない愛を
ひとりしかいない君にあげよう、と。

2011/01/07 (Fri)
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