詩人:アル
クロアチアの首都ザグレブ
セピア色の外灯に浮かぶ
白壁の街並みを
笛や太鼓に乗せた
シュプレヒコールや
消魂しいサイレンの
喧騒の中
反政府のデモ隊が
プラカードを手に練り歩く
「なんで止まるんだ!
先へ進めよ!」
急に動きを止めた
前方集団に
後列から怒号が飛んでくる
彼らが立ち止まったのは
菊の御紋のある
日本大使館の前
一人また一人
ロウソクのランタンを
地面に置いてゆく
事態を察した群衆が
横並びに整然と集まり
静かに黙祷を捧げ始めた
遠い異国の
3万人もの死者や
行方不明者のために
デモ隊は
暫くの静寂のあと
再び喧騒の中へと
戻って行った
ふと見上げれば
斜めに掲げられた
白地に赤の日の丸が
風にはためいている
その上の夜空には
乳白色の満月が
寄り添うように
浮かんでいた