詩人:中村真生子
散歩をする人はまばらで
釣り人はまったくいないほど
強風が吹き荒れている朝。
海は白波と轟音を立て
川は逆波が立っている。
草木は激しくたなびき
人は押されそうになる。
人間にとっても
草木にとっても受難の朝。
けれど彼は違う。
そう、トンビにとっては…。
待ってましたとばかりに
風に乗り
技を披露するよう
大きな円を描きながら
ゆうゆうと空を舞う。
頭を上げてその姿に見とれ、
風の朝が少し楽しくなる。
トンビのことを英語では
Black kite(黒い凧)と言うらしい。
2012/09/25 (Tue)