詩人:望月 ゆき
夜の手のひらに
背中を押されて
チラチラと散らばる
港の明かりを見下ろしに
いつもここへ来る
デパートの裏の階段にすわり
わたしたちは
寄り添ったり
ときどき 無口になったりした
あなたはとても
遠く遠い夢を持っていて
よく わたしを忘れた
その間はいつも
通り過ぎる船の汽笛が
わたしの手を握ってくれた
船が行ってしまうと
いくつもの波がよせては返し
涙はそこまでつづいてのみこまれる
本当は追いかけてほしかった
そうしていつだってあなたは
涼しくたちあがり
わたしは波のことを忘れてしまう
わたしでない何かを追いかけて
わたしを忘れている間
あなたはいつも やさしい