詩人:甘味亭 真朱麻呂
この風に名前はありません
だからいくら聞いてみたって返事なんて返らないんだ
この風は無口ではないけど
理屈で考えるからおかしくなるけど風は口を持たず言葉を知らないと言っとく
僕の目に映っているのは本当のことなのに
なぜだかすぐには信じられないのは 確かな証がないから
僕の耳に聞こえている声や色んな情報には
嘘や偽りなんてないのはわかってるけど
思わず怪しんでしまうのはそれだけに世の中が嘘と偽りで今溢れかえってるから
小さくうなずいたあとにあなたの涙を見た
僕もこんな嘘ばかりの場所にいるから怪しむことしか知らなくなる
疑ってばかりで信じられなくなる どんな大切な人の言葉も
涙してつぶやく信じてよと言う声すらも届かない
自分でもこんな僕は本当はスゴく嫌いなのに そんな自分にいつも気を許し安易に抱きしめてしまう
ただ正しさを傷付かない為の自分を守る盾にするように
正しさでめんどくさい事をさえぎって
そう嘘を知っていてズルく許すように
きれい事ばかりの世界はくすんで見えた
雨は降る 木は育つ
きれい事を並べた世界は余計にきれいで
全てをきれい事で済ませばそれで済むみたいに全てがきれい事で言い固められた心の中の土の上に立ち尽くしたまま
またもきれいなだけの美しいだけでもろい裏を返せばずる賢いだけの言葉つぶやく
虹の袂に咲く花が本当のきれいさを持つ明日を小さく伝えてても気づかないまま
不安の風はまだ生まれた間もない育ち盛りの世の中知らない若葉の赤ん坊にさえ 不穏な未来を吹かし落とし穴にいざなう
そんな世界を残すのかな 間違いや過ちを正しいと教えるのかな 双葉になる頃にはそんな嘘を正当化したりずるさを盾にする汚さを知るのかな
絶え間なく日々がただ外側からじゃ見えないから順調に黒く汚れてく ずっと嘘をつくうちに笑顔さえ嘘っぽくなる。